「結いっこ」
「結い」(よい)とは、金銭授受を伴わない地域による助け合いの慣行を言います。田植えや稲刈り・林道作業や排水路の整備・屋根の葺替えなどがあります。秋田県北部の方言では、「結(よ)いっこ」と言います。「皆で助け合いながら暮らそう」という地域体の発露です。しかし現代は、社会情勢も変わり地域の結びつきが少なくなり近隣関係に無関心な社会環境となっています。昔のような「結いっこ」を取り戻すのは困難なので、現代型の「結いっこ」による真の住まいづくりをアトリエ あすかは、提案します。
秋田県二ツ井町 麻生会館「人の絆、地域の絆。」
地域の絆・結いっこで創った集会所
館内にあふれる木の香り、優しい手触り、随所に見られる伝統の技。
木の素晴らしさと「結いっこ」(よいっこ)の精神が集結しています。
現代の「結いっこ」
- ■もの(建設資材)
- ●地元の自然素材を使う。
- ・地場産業の活性化を図る
- ・生産・運搬にかかるエネルギーを削減する
- ■ひと(造り手)
- ●地場の職人を使う。
- ・気候風土を生かす
- ・伝統文化を継承する
- ■きずな(地域の協力)
- ●地元の人が協力する。
- ・地元の人達の絆を強める
- ・自然を保全し街並の調和を図る
- ■昔の「結いっこ」住宅建設
- ・古いすまいの解体
- ・建方
- ・茅葺き
- ・土壁の小舞かきと荒壁塗り
- ・土間の叩き
- ■昔の「結いっこ」維持管理
- ・共有林の育林
- ・共同茅場の手入れ
- ・茅屋根の葺き替え
木材の地元調達
集落共有林からの木材調達
78戸と小集落だが、その集落は三世代前の明治時代に杉の苗木を植林し、下刈り・除伐・枝打ち・間伐等の育林作業を、現在も年に一度、結いっことして継続しています。
災害復興時などに活用する共有林は、部落会共有の財産なので営利目的の販売はしないが、その間伐材は地元のすまいづくりのために安価に提供できます。
個人所有林からの木材調達
30年前に、一部の共有林を全戸に各3反歩ずつ区分けしたが、現在は、半数以上が売却するなど山を手離してしまい、持ち続けた山の立木も代替わりとなった。樹齢30〜40年生の木が多く、本来のすまいづくりは、持ち山の木材を使うのが基本だが、ここは所有林は若木ゆえ、今はまだ使用できない。
本建物への共有林伐材の調達
表1と2に示した必要立木が表3の共有材間伐によって賄われる。
立木で100本を必要とするが共有林の間伐材で十分可能である。
他の資材の地元調達
ゼオライト
- 二ツ井町は良質ゼオライトの産地
- 二ツ井町は硬質ゼオライトの産地として、地元産を古来から礎石や石蔵等の建築資材として使用していた。
- 土壁と土間用の土
- この地域の昔からの土場から粘性土を採取し使用する。
建具・家具・建材・機器の地元調達
- 木製サッシ
- 町内の有志建具工が製作している秋田杉の製品を使う。
- 木製流し台
- 大工職人が製作した秋田杉を使う
- 杉樹皮のリサイクルボード
- 秋田県立大学木材高度加工研究所が断熱材に開発したボードを使う
- 木質燃料ストーブ
- 町内の鍛冶屋が製作しているガスボンベ再利用の薪ストーブ、或いは、町役場で開発した木質ペレットストーブを展示用として使う。
職人の地元調達
- 発注方法
- 顔の見えるつくり手と適正価格の請負い方法で
- 麻生集落と二ツ井町の職人による建設
- 麻生に基本のつくり手大工職人が3人おり、また町内には建設に必要な職方が充分居る。原則として、二ツ井町内の職方で建てる。
地元の人達による建設協力
- ■建方への応援
- ■土塗りの手伝い
- ■土間設営への参加